腹黒脳外科医は、今日も偽りの笑みを浮かべる

 先生、きっとエッチだって私が無理してしたんだろうって、思ってる。
 確かに、恥ずかしくて、ちょっと痛かったし、うまくできなかった部分も多かったかもしれないけど。

(あの時、十分すぎるくらい心の準備はできてたし、なんなら、今も、今の先生とならしてもいいって心の準備できてるんですけど……!)

「先生、それ、違ってぇ……!」

 先生にとっては、私は10歳年下で子ども、もしくは妹みたいないつまでも純粋な存在なのかもしれない。

『実は私はあなたの思ってるような純粋な人間ではないんです……! 美奈さんにそれはそれはもう色々教えてもらって知識だけは豊富なんです!』と言うべきか。それはそれでどうなんだ……。

 そんなの、今のリク先生にとってはドン引きものではないだろうか……。もちろん私だって、今のリク先生に嫌われたくないからできれば言いたくない。

 そうこうしているうちに先生は、遅くならないうちに行くね、と優しく微笑んでリビングを後にした。

< 126 / 218 >

この作品をシェア

pagetop