腹黒脳外科医は、今日も偽りの笑みを浮かべる
そうこうしているうちに、土曜日が訪れた。
土曜は室長と待ち合わせして講演会に行くことになっていた日で、ぼんやりする時間がなくてよかったと、そんなことにほっとする。
講演場所は駅前のホテルの会議室。
講演タイトルは『心に向き合う精神医療』というもので、一般の方向けなのに専門的な内容もかみ砕いて話に入っていて、わかりやすいのに充実した講演だった。
講演された先生は、テレビでは時々顔を見る『精神医療若手のホープ』とも呼ばれている工藤晴信先生という先生で、壇上で話しているだけでも人を安心させる雰囲気のある先生だと思って聞いていた。
私もあんなふうに患者さんに安心してもらえるスタッフでいられているだろうか。
それにリク先生にも……。
私はなぜか、その話を聞いて、夜のリク先生のことばかり思い出していたのだった。