腹黒脳外科医は、今日も偽りの笑みを浮かべる
救急のほうか、脳外の方か……。少し考え、とりあえず脳外の医局に向かうことにする。
脳外の医局の中をのぞくと、疲れた顔をした二人の先生がいたけど、挨拶もせずにそっと医局を後にした。
医局にいないなら、きっと宿直室だろうと、そのまま宿直室に向かうことにしたのだ。
宿直室は、休憩室の奥にある。
休憩室も暗く静まり返っていて、昼間とは大違いだ。休憩室に入り、その奥に足を進め、扉に手をかけたところで、女性の押し殺したような声が中からして、手と足を止めた。
「……女の人?」
そっと扉に耳を当ててみる。この宿直室は基本的には男性医師が使うと思っていたのだが……。困って固まっていると、声はさらに響いてくる。
『あ、あ、ぁんっ……!』
私はこの声の意味を知っていた。
嫌というほど……。
「ひっ……これって……!」
(これ、職場などでいたす人間もいるって美奈さんに聞いたことあるやつ……!)