腹黒脳外科医は、今日も偽りの笑みを浮かべる

「あ、り、リクさん」

 私が言うと、リクさんは満足そうに微笑む。
 次の瞬間、また隣の宿直室から女性の言葉にならない高い声が響いてきた。

 思わず耳をふさぐ。

「な、ななななんでこんなとこで、ああああんなことしてるんですか……!」
「まぁ、どっちも勤務時間外だけど、家に帰れなかったんだろうね」

 リクさんは当たり前のように宿直室の扉の方を見つめ、そんなことを言う。

「り、リクさん……中の二人、誰だかわかるんですか」
「まぁ、夜のことは大概ね」

 そう言ってリクさんは苦笑した。

 そう言えば、リクさんは毎日夜ここにいるんだ。
 それは夜しか出てこないリクさんにとってほとんどの時間と言えるだろう。

 私は思わずリクさんを見る。

(リクさんは、それでいいんだろうか……)

 リクさんは私の様子に気づいて、じっと見つめ返された。
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