腹黒脳外科医は、今日も偽りの笑みを浮かべる
私はリクさんと目が合ったことになんだかやけに慌てて口を開く。
「そ、そう言えば、私、さっき、中にいるのリクさんかと思ったんです」
「え?」
「だって、夜だし、リクさん、性欲的なものが強いって、一度じゃ足りないって言ってませんでした? 誰かとそういうことしてるのかと思っちゃって」
私が言うと、リクさんは心底不愉快そうに眉を寄せた。
その顔を見て、私の胸はどきりと跳ねる。
「そう思われるのすごい不愉快だよ。僕が好きなのは、ももだけなんだし、抱きたいのもももだけ」
リクさんは低い声で言う。
そのぴしゃりとした通った声に、思わず言葉に詰まった。
(リクさん、怒ってる……?)
そう思うと、泣きたくなる。
さっき、リクさんじゃないって分かった時、少なからずほっとした。なのに、私は慌ててたとはいえ、なんでこんなかわいげもない、傷つけるようなこと言っちゃったんだろう。本当にバカだ。
「……すみません」
ポツリとそういうと、ま、僕も悪いか、とリクさんは私の頭を少し乱暴に撫でる。
私はリクさんを見上げた。その瞬間、リクさんが困ったように笑った。その顔にやけに胸が痛くなる。