腹黒脳外科医は、今日も偽りの笑みを浮かべる

 そんなことを考えていると、中から『もっとぉ……!』と、さらに女性のなまめかしい声が響いてきた。

「ひぃっ……!」
「知識だけは豊富なのに実践は全然ダメなんだよねぇ」

 震える私を見て、リクさんには楽しそうにケラケラ笑われる。

「ち、知識と経験は別物なんですっ……!」

 想像はいくらでもできたけど、想像は結局のところ想像だ。
 っていうか、この前の先生と初めて過ごした夜のことまで思い出されてきて、心底恥ずかしくなる。まさか私もあんな風だったのだろうか。

(さらに想像力が豊かになってる……! もっと、って、何をもっとするのか何通りか生々しく想像してしまうんですけど!)

 そんなことを思っていると、リクさんが強く私を抱きしめた。

「ひゃっ……!」

(これは、まさか、この女性の声聞いて欲情してますっ⁉)

 それはそれでなんだか納得いかない。さっき、私以外には欲情しないと言ったばかりじゃないか。
 この気持ちは一体なんだろう。まさかこんな理由でヤキモチ妬いてるのなら泣ける。
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