腹黒脳外科医は、今日も偽りの笑みを浮かべる

 慌ててリクさんを押そうとすると、リクさんはその手を取ってまたクスリと笑う。

「そんなに怯えなくても何もしないから、大人しくしといて」

 そう言ってリクさんは苦笑して、私を正面から向き合わせ、そっと耳に手を当てる。
 リクさんの手は少し冷たかった。

「これで、聞こえないよね?」

 そう言いながら声が聞こえないように少し強く耳をふさがれ、私は頷く。

(リクさん、聞こえないようにしてくれたんだ)

 静かな空間。
 まるでリクさんと私の二人だけがこの世にいるような錯覚……。

 そう思うと、勝手に顔が赤くなるような気がした。
 するとそんな私の顔を見て、リクさんが苦笑する。

「な、なんですか」

 リクさんの唇が何かを喋る。
 耳をふさがれて、何を言ったのか分からなかった。

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