腹黒脳外科医は、今日も偽りの笑みを浮かべる
10章:夜と朝の彼
唇が離れた瞬間、恥ずかしくて目線を反らせる。
しかし、耳はリクさんの両手でふさがれたままなので、顔は動かせなかった。
リクさんはそんな私を見て楽しそうに笑うと、軽いキスを繰り返した。
慌てて、そのキスから、手から逃れるように動くと、リクさんの手のひらが耳から離れた。
「も、もう、やめてくださいっ」
「どうして? 夫婦なんでしょ」
「そうですけどっ!」
だけど、私が結婚したのは夜までの『リク先生』だという意識が強くて、なんだかリクさんとこういうことをすることに罪悪感が募る。
リクさんは先生の本心って言ったって、先生自身はこのこと、覚えてもないんだよね……?
それも分かってるのに、分かった上で、さっき私からキスをしたような……。
いや、リクさんから? どっちにしても拒否しなかったのは私だ。