腹黒脳外科医は、今日も偽りの笑みを浮かべる

 半分泣きながら怒っていると、リクさんはまた楽しそうに笑った後で私の頭を撫でる。
 思わずリクさんを睨みつけるとリクさんは口を開いた。

「別にいいじゃん。僕はやらしいももも大歓迎だよ」
「でも、先生は……」

 言いかけた時、リクさんの眉が不愉快そうに動く。
 私は思わず口ごもった。

「そう言えば、ももから迫ってアイツに断られてたよね。無理しないでいいって」
「う……。リクさん、なんでも知ってるんですね」
「それはそうだよ。僕は、アイツが見たものは全部見てるし、アイツが言ったことや聞いたことは全部聞こえてるんだから」

 リクさんは微笑んで、私を抱きしめる。
 慌てたけど、その胸の中のぬくもりが温かすぎて目を瞑りそうになる。

 そんな私にリクさんは続けて話し出す。

「それでも、ずっと……この手の中にももを抱きしめてる実感は湧かなかった。アイツは手を出してしまうことが怖くて、全然ももには触れようとしなかったから余計だね。でも、僕は気づいたんだ。直接、好きな人とこうしていられるのが、幸せってことだって」

 そんなことをさらっと言うリクさんに、顔がまた熱くなる。

(リクさんも『好き』だとかそういう事普通に言うんですね……!)

 なんだかすごく気恥ずかしい。だけど……
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