腹黒脳外科医は、今日も偽りの笑みを浮かべる
ぼんやりしながら朝食を終え、支度を終えると家を出る。
その時、リク先生が同じタイミングで家を出た。
「せっかくだし、一緒に行こう」
「はい」
先生は頷いた私の手を持ち、それから手を繋ぐ。
そうされると、昨日の夜のリクさんの手の温度を思い出して、やけに落ち着かなくなった。
「もも?」
「あ、いや、すみません。やたらと手に汗が……離してもらっていいですよ」
「何言ってるの、そんなの気にならないよ」
そういうと、先生は握る手に力を籠める。
いつもは、こんなに強く握らないのに。
病院についてからの分かれ道……私はつながれたままの手を見る。
「先生? もう私、こっちなんで、手……」
先生は自分の手を見て、ゆっくり手を離す。
「あ、うん。そうだね。もも、いってらっしゃい」
「はい、行ってきます。先生も、いってらっしゃい」
私がそう言って歩き出そうとした矢先、腕が突然引かれた。