腹黒脳外科医は、今日も偽りの笑みを浮かべる
いつもより早く仕事に行く準備をし、いつもより早く病院に着くと、更衣室に向かった。
その途中で、一昨日の夜にリクさんとキスを交わした休憩室が目に入る。
私はその前で立ち止まってそこを見ていた。
―――直接、好きな人とこうしていられるのが、幸せってことだって。
リクさんの言葉、何度も思い出す。
そう言ってたくせに……結局あれからリクさんに会えてない。
(まぁ、リクさんもリク先生と一緒で患者さん第一だもんね)
それは十分わかってる。
別に一晩会えないくらいなんてことはない。
だって、リクさんってからかってくるし、すぐ変なことしようとするし。
っていうか、絶対変なことするつもりだったはずだ。
いや、そもそもなんで私はリクさんのほうを待ってるんだっけ……。
リクさんとはただ話しをして、リクさんのことを知りたいだけで……。それもリク先生のためで……。
私は、どちらかと言えば、リク先生と会いたいはずなんだから。
そう思っても、やっぱりなぜか、リクさんのことばかり思い出していた。