腹黒脳外科医は、今日も偽りの笑みを浮かべる
「は、はい、そうですけど……」
「そっか」
ぱしっと腕を取られて、それに驚いているとそのまま手を引かれ、休憩室に押し込まれるように入れられる。
朝の休憩室には光が差し込んで、夜より明るかったけど、中には誰もいなかった。
見上げると、先生はまるでリクさんが不機嫌な時みたいに眉を寄せている。
一瞬でこの前の夜のことを思い出した。
(今、朝だけど……もしかして)
「り、リク……さん?」
「違う。ももは僕のことをそんな風に呼んだことはないよ?」
そう言って、リク先生はまっすぐな瞳で私を見つめて付け加える。
「夜の僕じゃなくて、がっかりした?」
「まさか!」
私がぶんぶんと首を横に振ると、リク先生はふっと微笑む。
リク先生を見上げると、先生と目が合った。そうなるともうその目をそらせられなくなった。
今、目の前にいるのはリク先生だ。
大好きで大好きで、結婚したリク先生。
するりと大きな手に頬を撫でられ、びくりと身体が跳ねる。
それから、先生の端正な顔がゆっくり近づいてくる。
(もしかして、これ、キスされたりする⁉)