腹黒脳外科医は、今日も偽りの笑みを浮かべる

 こんなところでこんなこと、今までのリク先生ならありえないことだ。
 でも、昨日の朝も唇に軽いキスをされたっけ。

 私は思わずそれを止めようと手を伸ばしていた。
 なのに先生は私が止めた手の指を絡め取って、後ろにあった壁に縫い付ける。

「ひゃっ……!」

 ちょっとまって。なんかこれって……
 ただの軽いキスの雰囲気じゃない!

(朝だよ! 病院だよ! まさかまさかまさか⁉)

 脳内思春期男子だからそんなことばっかり考えちゃうじゃないか!
 しかも、当たり前だけど、リク先生の顔はリクさんと一緒だし!

 それもこれも全部全部リクさんのせいだ!
 リクさんがいつも色々しようとするから!

「せんせ……!」

 覚悟してぎゅっと目を瞑った。

< 175 / 218 >

この作品をシェア

pagetop