腹黒脳外科医は、今日も偽りの笑みを浮かべる
我妻先生が去った後、リク先生はただ黙ってそこにいた。
私はそれを見て、何故かゴクリ、と息をのんでしまう。
「あ、あの、先生……」
「さっきの『また』ってどういう意味? この前って、もしかして、お弁当持ってきてくれた夜に、夜の僕と何かあった?」
詰められる口調でそう言われて、背中が冷える。先生を見ると、先生は怒っているような目で私を見ていた。
不安に襲われて、いつのまにか目元が熱くなる。誘導されるように口が勝手に開く。
「き、キスは……しました」
(ナニコレ。知らないけど、浮気がバレたときの現場ってこんな感じなんじゃないの……?)
先生が知らない間に男の人とキスをしたことが『浮気』と言うならそうかもしれない。
それに、その先もしようとしてた。
たぶん、あの時、緊急対応がなければきっと『そう』なっていた。なんなら、昨夜もリクさんを待っていた。