腹黒脳外科医は、今日も偽りの笑みを浮かべる
12章:私の好きな人
それからは、頭の中の整理がつかなくて、空き時間さえできればぼんやりしてしまっていた。
こんなことじゃいけない。そう思って、仕事だけは何とかこなしている状態だった。
(ちょうど、今日は面談少なくて助かった……)
夕方、打ち合わせが終わって病院の廊下を歩いていると、また、ふとたちどまってぼんやりしてしまっていた。
「おい、……おーい、もも!」
「斗真⁉」
気づいたら、目の前に斗真が突然いて、私は飛び上がりそうなほど驚いた。
「おい、ぼんやりしすぎだろ。大丈夫か? さっきから何度も呼んでるんだけど」
「ご、ごめん。斗真。お見舞い?」
「いや、今日は仕事でな。ついで、って言ったら怒られそうだけど、ばあちゃんの顔も見てきた」
斗真はそう言って笑う。
その笑顔を見て、私は心底ほっとしていた。
昔から裏表のない、わかりやすい幼馴染という存在はありがたい。
先生の真意が、今、よくわからないから余計に。