腹黒脳外科医は、今日も偽りの笑みを浮かべる
リク先生は私たちの前で立ち止まると、斗真に笑いかけた。
「斗真くん、こんにちは。深海さん、今日、斗真くんの顔見られて嬉しそうだったよ」
「そうですか? ばあちゃん、今日も李久先生の話しばっかしてましたよ」
「そっか。それは嬉しいな」
リク先生はそう言って笑うと、私の前まで来て、私の髪を撫でる。
「もも。もうすぐ一度帰ろうと思ってるんだけど、ももももうすぐ終業時間だよね? 地域医療連携室まで迎えに行くから一緒に帰ろう」
「え……は、はい」
「うん」
リク先生はもう一度私の髪を撫で、それから斗真の方をまっすぐ向くと、「じゃあね。斗真くん、気をつけて帰ってね」と言って踵を返して行ってしまう。
(なんだったんだろ。いつも以上に、頭撫でられたような……)