腹黒脳外科医は、今日も偽りの笑みを浮かべる
そんなことを考えている私に、斗真が、
「李久先生、雰囲気変わった?」
と問うた。
「え……? そ、そう?」
(もしかして、少しだけどリクさんと雰囲気が似てきていること、斗真にもわかるんだろうか)
斗真は、顎に手を当て呟く。
「今まで俺のこと、あんな風にわかりやすい目で見たことないよ。前にクギを刺した時だってあんな目はしてなかったし。まぁ、気にしてはいただろうけど」
「……それ、どういうこと?」
言っていることの意味が分からなくて私は首を傾げる。
すると、斗真は苦笑した。
「ほら、いいから早く仕事片付けて来いよ」
「……斗真ともっと話したかったなぁって思ったのに」
(先生のこと、斗真ともっと話したかった)
そう思っていると、斗真は呆れたように息を吐く。
それから手を私の頭まで持ってきたと思うと、ぴたりと止め、それから何もせず元の位置に手を戻した。
「何言ってるんだよ。俺となんていつだって話せるだろ。ほら、とにかく行ってこい」
「うん。ありがとう」
「頑張れよ」
こうして、昔から何度も何度も、斗真は私の背中を押してくれたんだ。
そう思うと、私はやけに勇気が湧いた。
今日、先生とゆっくり向き合って話してみよう。
ちょっと怖いけど……。私の今の気持ちも伝えたい。
―――これまでずっとそうしてきたように。