腹黒脳外科医は、今日も偽りの笑みを浮かべる
地域医療連携室に戻って慌てて仕事を終わらせると、リク先生がノックして部屋に入ってきた。先生は着替えて、スーツだった。
私は先生のスーツ姿に、つい見惚れそうになる。
「もも。終われそう?」
「あら、お迎えなんて羨ましい」
私より先に、室長が返事をした。
それに、リク先生が微笑んで返す。
「今度正司先生にお伝えしておきましょうか?」
「ほんとにやめて。あの人はね、私をからかうことに全てをかけられる人なの」
その言葉を聞いて思わず笑いそうになりながら私は自分のパソコンを閉じると、荷物を持った。
「ごめんなさい、お待たせしました。室長、すみません、お先に失礼します」
「お疲れ様」
部屋の外に出て扉を閉めた瞬間、リク先生に手を取られ、指を這わされたと思うと、キュと手を繋がれる。
思わず先生を見上げると、先生は微笑んだ。
「食事して帰ろう」
「い、いいんですか?」
「うん、もう予約したし」
先生はそういうと、私の手を引いた。