腹黒脳外科医は、今日も偽りの笑みを浮かべる

 連れて行ってくれたのは、駅前のホテルの最上階にあるフレンチだった。
 キラキラとした夜景と、いつも通りかっこいいリク先生と、目にも舌にもおいしい料理で、緊張感が解けてくる。

「すっごくおいしいです! 先生とこんなところで二人で食事できて幸せ」

 思わず、にへら、と微笑んでしまう。
 そんな私を見て、先生は少し申し訳なさそうに微笑むと、突然真剣な顔になって、

「ごめん」

と頭を下げた。

「いや、な、なんですか? なんで謝るんですか。別に先生、何も悪いことしてないのに」
「前にも言ったかもしれないけど、不安だったんだ。ももに夜の僕のこと分かってしまうのが」

 そう言って、先生は続ける。

「だから、遠ざけた。できるだけ夜の僕に会わないようにって。こんな普通の夜のデートもこれまで全然してこなかったよね」
「いいんですよ。私は、先生と結婚できて一緒にいられるだけで」

「ももは夜の僕のことも受け入れてくれ始めた」

 先生はそういうと、まっすぐ私の目を見つめた。

「僕はそれが嬉しくて、……それからちょっと嫉妬してる」
「し、嫉妬……?」
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