腹黒脳外科医は、今日も偽りの笑みを浮かべる


 一瞬、先生が面食らった顔をして、それから、ありがとう、と微笑む。
 ほっとした瞬間、なんだか妙な空気を感じて、周りを見渡した。

 周囲のお客さんがみんなこちらを見ていたのだ。
 静かなホテルのレストランの空間で、私の声はやけに通っていたらしい。

 一瞬の間ののち、なぜか拍手が巻き起こる。
 私は非常に恥ずかしくなって、ぺこりと頭を下げると、そのまま席に着いた。

(あぁ、公開告白しちゃった! もう夫婦なのにこんなとこで大声で告白して、私は何をやってるんだ……!)

 そんな私を見て、先生が楽しそうに笑っていた。
 まるでリクさんみたいに。

「ご、ごめんなさいぃ……先生まで恥ずかしいことの巻き添えにしてしまいましたぁ……」
「気にしないで。すごく嬉しいし」
「ほんとですか?」

(それ、絶対気を使ってくれてますよね⁉)
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