腹黒脳外科医は、今日も偽りの笑みを浮かべる
それから、これまでのリクさんのことを思い出していた。
「前に……リクさんも言ったんです。『ももも、こんな人間だって知ってたら好きにならなかったでしょ』って」
先生は頷く。
私はそんな先生に、そして、きっとこれを聞いてるだろうリクさんに続けて言った。
「その時は、言葉に詰まっちゃったんですけど……でもね、今ならわかります。結局好きになってたと思います。だってどっちの先生も、患者さん第一なところは変わらなかった」
「え……?」
「先生がずっと患者さんのことを大切に思ってたから、私はそんな先生が好きで、先生の大切に思ってる患者さんも、先生自身も、大切にしたいって思ったんです」
先生は『昼』と『夜』にわけて考えてたけど、
私にとってやっぱりどっちも同じリク先生で、どっちも私が唯一好きになった人だから。
「だから私、リク先生も、先生の本音の夜のリクさんも、好きです。先生が嫉妬してくれちゃうくらいには、私、先生の本音も好きなんです」
私は、にっと笑って見せる。
(先生、私の本当の気持ち、分かって)