腹黒脳外科医は、今日も偽りの笑みを浮かべる
「もう、朝ですよ?」
「そうだね」
「好きです。リクさんのこと、大好きです」
私がリクさんの目を見てはっきり言うと、リクさんは少し驚いた顔をした。
「……やけに素直。僕にはそんな素直な態度あまりとってくれなかったよね」
「だってやっぱりどんな先生も好きだから」
私がきっぱり言うと、リクさんは目線を反らす。
「顔だけじゃないの?」
「まぁ、もちろん顔も大好きですけど、それだけじゃないです」
「医者だから、とか」
「ある意味そうですよ。聞いてたんでしょ? 『先生がずっと患者さんのことを大切に思ってたから、私はそんな先生が好きで、先生の大切に思ってる患者さんも、先生自身も、大切にしたいって思った』って」
たぶん、リクさんは不安なんだ。
でも、大丈夫だ。リクさんに、先生に、本心から信じてほしい。ただそれだけ。
「他には……身体目当て、とか」
「そんなわけっ」
思わず否定しそうになって、それから息を吸った。
「いや、正直、身体もです。いい身体すぎて直視できませんし、くらくらします。おかげで、いっつも変な夢見ちゃって悶々としてました」
「そんなこと言ってたら何されても知らないよ」
「いいですよ? 私のこと、ちゃんと信じてくれるなら。そしたら、何されても、いいです」
「……」
「先生が、リクさんが、私のこと心から信じてくれるまで、何でも本音を話しますから」