腹黒脳外科医は、今日も偽りの笑みを浮かべる
母が亡くなってからは誰にも本音を出せなくなった。
病院はいつだって大変な患者さんであふれてたし、妻を失った父はそんな中でいつも忙しそうで、自分の本音なんて出してはいけないもののように思って蓋をした。
しかし、我慢し続けていたら、高校になったころ変な症状が出た。
夜になると自分が好き勝手に行動し、発言していた。それがほとんど自分の本音やしたいことだったのだ。それも、『夜の僕』は、自分の理性的な感情でコントロールできない厄介者だった。
医師には、『我慢のし過ぎ』だと言われたが、具体的な対応策もなく、とにかく夜であろうと本音が出ないように必死にそれを抑えようとした。
そうしないと父に、病院に、なにより、そこにいる患者さんに迷惑がかかる。
それが一番の理由だ。
そうしていると、いつのまにか夜の自分は、もう現れなくなって安心した。