腹黒脳外科医は、今日も偽りの笑みを浮かべる
1章:嘘の代償
恒例の電子音が部屋中に鳴り響く。
枕元にあるスマホを取ろうとしたら、ガタン、と電子音以上に大きな音を立ててスマホが床に落ちた。
その音で目がぱちりと覚める。
自分の部屋のベッドの上だと言うこと気づいて、ため息をつきそうになった。
昨日は、病院長と美奈さんとご飯を食べて、帰って来てすぐ寝てしまったんだ……。
酔っていてもシャワーを浴びているのは、いつも通り。
それからあとは……夢と現実が曖昧になっていた。
それでも、感覚でわかる。
間違いなく『何もなかった』。悲しいくらいに、身体には一ミリも変化がない。
「やっぱり、夢だよね……」
心底がっかりして、手探りでベッドの下に落ちたスマホを探すと、アラームを止めた。