腹黒脳外科医は、今日も偽りの笑みを浮かべる
ももはそれから本当に資格を取り、病院の面接と試験にもパスした。
「リク先生! 見て! これで、西條総合病院で働けます! 大好きなリク先生のいる病院で!」
ももが西條総合病院の採用通知書を僕に見せて、それまでの苦労なんて苦労でもないようにニコニコ笑っている姿を見て……僕は思わず言っていた。
「……僕も、ももが好きだよ」
初めて、そんな本音が口から出た。
ももが心底、驚いた顔をして固まる。
「へ……?」
「もも、結婚を前提に付き合ってほしい」
ももは、完全に固まってしまって、目の前で手を振っても全然動かなくなってしまった。
さすがに少し心配になる。
「もしかして……嫌?」
「……い、いえ、いや、あっと、嫌じゃなくて、ただ、びっくりして……」
言った途端、彼女の大きな目から、涙がこぼれた。泣きながら、本当に嬉しそうに笑う。
その笑顔に、自分の心の中が一気に温かくなるのを感じていた。
「嬉しい。本当にいいんですか」
「ももこそ、10歳上のこんなおじさんでいいの?」
「いいです、もちろんです! それにリク先生はおじさんなんかじゃないです! かっこいいです! 好きです、大好き!」
子どもみたいに飛びついてきた彼女の背に腕を回してそっと抱きしめる。
その小さくて温かい身体と、素直でまっすぐな彼女の心を、これから一生守ろうと決心していた。