腹黒脳外科医は、今日も偽りの笑みを浮かべる
先生は当たり前のようにキスをして、それから目の前で微笑む。
「大好きだよ、もも」
「うぐぅっ!」
「ももは、こんな僕は嫌い? 引き返したい?」
先生がコツン、と額に額を合わせてきて、熱っぽい目で私を見つめる。
(何そのカッコよさ! なにそのあざとさは……!)
泣きそうになったところで、先生はまた私にキスをした。
「んっ……」
何か文句を続けたかったけど、全部そのキスに飲み込まれる。舌が口内を這い回って、絡められる。
だめ。
これ、完全に負けだ。
私は先生の大きな背中に腕を回すと、先生をキッと見た。そして、
「引き返したいなんて思うはずないですよ! なんでそんなこと言うんですか! 私がどんなリク先生も、大好きなの知ってるくせに!」
と叫ぶ。
先生はそんな私の言葉を聞いて、いつも以上に優しい顔で微笑んだ。
その顔に、また絆される。
次の瞬間、じゃあ絶対に逃さないというように私の両手に自分の指を絡めてベッドに縫い付けると、また全身へキスを進めていった。
―――ちなみにその日、私の記憶は7回目あたりで途絶えている。