腹黒脳外科医は、今日も偽りの笑みを浮かべる
エピローグ
―――それからまた一か月後。
あの日から、先生の自由度はさらに加速して増していると思う。
終業時間が過ぎた時、当たり前のように地域医療連携室の扉が開く。顔を出したのは他でもない、リク先生だ。
「もも。何してるの? 帰るよ」
「いや、そんな毎日のように迎えに来ていただかなくても、一人で大丈夫ですってば」
「だめ。心配だし」
「……もう少しで終わるんで、少し待っててください」
そうは言っても、先生が来ることを前提に仕事を進めているので、すぐ終われたりするのだけど……。
また全部先生の思い通りになるのもなんだか腑に落ちないので、すぐに尻尾を振って帰るわけじゃないんだぞ、と、こんな小さな抵抗にならない抵抗をしているわけだ。