腹黒脳外科医は、今日も偽りの笑みを浮かべる

 先生は苦笑すると返す。

「みなさんも変わってますね」
「でもわかるわ、その気持ち。先生のこと以前よりも好きよね? ももちゃん」
「突然ふらないでくださいよう!」
「そこは最愛の妻には、もちろん、って即答してほしいなぁ」

 リク先生がからかうように言い、私が言葉に詰まると、室長が軽快に笑う。

 私はなんだか恥ずかしくなって、誤魔化すように話題を変えることにした。
 
「先生、今日は仕事は? 最近日勤が多いですよね」
「プライベートが充実してるからオペ自体の効率も上がってきたし……自分にしか無理なオペ以外はできるだけ任せていくことにしたんだ。僕はオペが好きだけど、そうしないと後進も育たないしね」
「まぁ、それはそうですね」

 私が頷くと、先生はさらに微笑む。

「子どもも早くほしいから、夜はしっかりももと過ごしたいしね」
「……」

(おい、終業後とはいえ、ここは職場だぞ)
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