腹黒脳外科医は、今日も偽りの笑みを浮かべる

 情報が処理しきれない。
 きっと酔っているせいだ。

 なんなら……これも今朝のようにきっと夢だ。
 だって今日はもう12時を過ぎている。この時間はいつも私が寝ている時間。

 だから夢だ。
 夢であって欲しい……。

「あの、私、酔っぱらってるみたいなのでもう寝ます」

 立ち上がって自分の部屋のベッドに飛び込むことを決める。
 きっと寝て起きたら、明日はいつも通りの先生が……。


 そう思ったとき、パシリと腕が掴まれ、後ろから抱きしめられた。

「ひゃっ!」

(これ、服は着てるけど、夢と同じ展開!)

 でも、できればもっとロマンチックな展開でこれをお願いしたかった……!


 慌てて先生を振り払おうと思ったけど、くるりと無理やり先生のほうを振り向かされて、そのまま壁際に追い詰められる。

 いわゆる壁ドンの状態になったまま、先生は目の前でいつもどおり微笑んでいた。
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