腹黒脳外科医は、今日も偽りの笑みを浮かべる

―――それに……。

 私はそっと唇に触れる。

「まだ、キスの感触……残ってる」

 貪るようなキス。
 あんなキス、したことなかった。夫婦なのに、おかしな話だ。

 あんなこと言って無理矢理みたいにキスされて、それから……。


―――今すぐ、めちゃくちゃに抱いてもっと泣かせたい。


 先生の言葉を思い出すと、ゾクリと身体に電気が走る。

 でも、あれからの記憶はない。
 服装は元より、身体にも変化はない。

 ベッドから抜け出てリビングに行ったら、
 先生もいつも通り、もういなかった。
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