腹黒脳外科医は、今日も偽りの笑みを浮かべる

「もも、何か落としたの?」

 思わぬ言葉に、私は慌てて下を向く。
 考えてみれば、待合椅子の影に飛び込んだんだった。

「あ、は、はい……」
「大丈夫?」

 リク先生から手が差し出され、おずおずとその手を取ると、温かくてほっとして、また泣きそうになった。
 立ち上がった時、リク先生が、

「もも、今日も可愛いね」
「ひっ……!」

 その声に、思わず顔をそむけた。
 だって……、リク先生の『可愛い』って……。

(やっぱり泣きそうになっていたからですか……⁉)
< 37 / 218 >

この作品をシェア

pagetop