腹黒脳外科医は、今日も偽りの笑みを浮かべる
「もも、何か落としたの?」
思わぬ言葉に、私は慌てて下を向く。
考えてみれば、待合椅子の影に飛び込んだんだった。
「あ、は、はい……」
「大丈夫?」
リク先生から手が差し出され、おずおずとその手を取ると、温かくてほっとして、また泣きそうになった。
立ち上がった時、リク先生が、
「もも、今日も可愛いね」
「ひっ……!」
その声に、思わず顔をそむけた。
だって……、リク先生の『可愛い』って……。
(やっぱり泣きそうになっていたからですか……⁉)