腹黒脳外科医は、今日も偽りの笑みを浮かべる

 そのまま逃げるようにその場を後にして、それからできるだけ先生と顔を合わせないようになんとか一日こなした。

「つ、疲れた……」

 終業後の疲労感は、決して仕事だけのせいではない。


「逃げてても解決できないのは分かってるんだけど、もう少し考える時間が欲しいだけなんだよぉ……」

 先生に言われたこと、自分でもこなせてない。

―――もも、今日も可愛いね。

 やっぱり今日も泣きそうだったから……?

 いつもは気持ちが跳ねるその嬉しい言葉も、胸の中を疑問と不安で埋め尽くす言葉になっていた。

< 38 / 218 >

この作品をシェア

pagetop