腹黒脳外科医は、今日も偽りの笑みを浮かべる
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 私の勤める西條総合病院は自宅マンションから徒歩10分のところにある。

 朝7時5分に家を出て、15分には病院に到着。5階にある更衣室で着替えると、7時半には2階にある地域医療連携室の鍵を開ける。
 窓を開けて空気を入れ替えようとしたとき、室長のデスクの上の書類が飛んだ。慌てて書類を掴んで元の位置に戻すと、近くにあった穴あけパンチを上に置き、他の窓も開ける。

 地域医療連携室は、私も含めて常勤は4人体制。なのに書類が多く、倉庫も一緒になっていて、各科のナースステーションより広くなっている。その分掃除も大変だから、少しでも早く来て簡単に掃除するのが日課になりつつあった。


 掃除が終わると席について、昨日入れたデータをもう一度チェックして、今日の担当患者さんとご家族のデータを探す。
 今日の面談は院内中心で朝に2件、昼以降に3件。その前に担当の看護師さんに様子を聞いて、今後の計画も立てる。昨日退院した深山さんの様子も見に行きたい。あの老人ホームは、先月退院した曽根さんもいたもんね。

 ざっと目を通して、それからメールのチェック。メールボックスには新着48件の表示がされていた。
 すぐに対応が必要そうなものと、私に判断のつかないものはプリントアウト。明日以降でもよさそうな事務連絡は一旦簡単に返信して、転送だけ。

 今日必要なものをクリップボードに挟んで書き込みをしていると、地域医療連携室の室長・正司夏子さんがやってきた。
 その顔を見てホッとしたとき、事務の十川さん、柊さんもやってきた。

 時計を見ると、8時半。朝のミーティングの時間だ。
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