腹黒脳外科医は、今日も偽りの笑みを浮かべる
泣きそうになったところで、美奈さんは私の頭をポンポンと叩く。
「まあ、私だってあんたたちの子どもはかわいいだろうし楽しみよ。でもね、無理はしなくていいの」
美奈さんはワインを煽ると、微笑んで続ける。
「ももの母親は……私の妹はね、ももがいることが生き甲斐だったし、だから余命半年だって言われても、1年以上頑張れたんだと思ってる」
「はい……」
私が美奈さんのワイングラスにワインを注ぐと、美奈さんはそれをじっと見て続けた。
「私は不謹慎にも、やっぱりそういう大事な存在って人には必要なんだな、って思った。子どもじゃなくても、大切な人でもね」
そう言われて、私の頭には、リク先生の顔が浮かぶ。
それが分かったのか、美奈さんは微笑んだ。
「だからももが李久くんのこと好きになって夢中になってるの、あの子は嬉しそうに見てたし、喜んでたわよ。そんなに好きな存在に出会えて、まして結婚までしたなんてすごい奇跡じゃない」
「それは……」
「だから、無理しなくてもいいのよ。2人の生活の延長線上に子どもができることだってあるかもしれないし」
美奈さんは言う。
黙り込んだ私に、美奈さんは慌てて付け足した。
「あ、男を喜ばせる夜のテクニックは、またいつでも聞きなさい! いつでも教えるわよ!」
それを聞いて、泣けてきた。