腹黒脳外科医は、今日も偽りの笑みを浮かべる
私たちのマンションに戻ると、リク先生は玄関で立ち止まった私を心配そうにのぞき込んだ。
「もも? どうしたの?」
「せ、先生が昨日言ってたこと……私まだ、なんていうか自分の中でこなせてなくて」
「昨日?」
「は、はい」
私は頷く。そして息を吸って、吐き出すように続けた。
「先生が本当は優しいふりをしてるだけとか……。オペが何より好きだとか……。わ、私に、もっと泣いてほしいと思ってるとか……。自分にいじめられて泣いてる私が可愛い、とか……。私、先生の期待に応えたいけど、やっぱりそれは意識してできるわけもなくて、難しいと言うか……」
どうしていいのかわからないままの、自分が情けない。
目が潤むのを感じる。
(先生は、そんな私のほうがいいと思ってる?)