腹黒脳外科医は、今日も偽りの笑みを浮かべる

「ももちゃん、今日、田所さんのご家族の面談の時間見た?」

 ミーティングが始まり、室長が言う。

「はい。19時からになったと記録の方に」
「ごめんね、遅くなりそうで。どうしても時間が調整できないって言ってる間に退院も迫ってしまって」
「いえ、全然。むしろ時間の調整がついてよかったです。退院後スムーズに生活がスタートできればこれからの自信にもなりますし。整形のスケジュールも確認したほうがいいですよね」
「うん、よろしく」

 そう言われて、ほっと胸をなでおろして頷く。
 ここに入って一年半。やっと独り立ちしたが、いまだに不安なことも多いのが現状だ。

「じゃ、今日もよろしくお願いします」

 ミーティングが終わり、事務の二人が慌てて席につくとちょうど午前9時。
 それは病院の電話が受付を始める時間で、電話はいつも通りすぐに鳴った。

 いつも通り完璧な対応をしている二人を見ながら、私は私で必要な書類をそろえて、室長と面談室に行くことになっていた。

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