腹黒脳外科医は、今日も偽りの笑みを浮かべる

 先生は反省して泣きそうな私の頰に触れ、それから前髪をそっと退かして、額に優しいキスをする。

「大丈夫だよ、もも。怒ってないから。理由がわかってホッとしただけ」
「ほ、本当にごめんなさい」
「寂しい思いをさせてるのは確かだし」
「私は、大丈夫ですから……」

 私がそう言ったとき、先生のスマホが鳴った。
 先生がそれを取り出すと、そこには【西條総合病院】の表示。

 オンコールだ。

「ごめん、これからもう一度病院に戻るよ」
「はい」

 寂しい、なんて言えなくて、私は頷いて先生を送り出す。
 そのまま私は先ほどキスされた額に触れた。

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