腹黒脳外科医は、今日も偽りの笑みを浮かべる

 だけど、実際、言うとなると、私はなんだか自信がなくなって口ごもってしまう。
 もう一度自分の手を握り締めたけど、結局勇気が出なくて、首を横に振った。

「あ、いえ……私、今からお昼で……。先生は?」
「これからオペなんだ」

―――僕は、手術は好きなんだ。むしろ、一日オペしてないとストレスたまってダメなの。

 オペ、と言う言葉に、夢の中で聞いた先生の言葉を思い出す。
 思わず頭をプルプル振って、その言葉を投げ捨てた。


「どうしたの?」
「や、やっぱ、な、なんでもないですっ!」

 そう言って、その場を逃げ出す。


―――私、またあの夢の先生を思い出してた!

< 55 / 218 >

この作品をシェア

pagetop