腹黒脳外科医は、今日も偽りの笑みを浮かべる

 面談室まで室長と廊下を歩いていると、

「なんだかすごく感慨深いわぁ……こんなに小さかったももちゃんがこんなに立派になって」

 そう言いながら、室長は親指と人差し指で3cmくらいの隙間を作って見せ、それから私を上から下まで見つめた。
 室長こと、夏子さんは私が小さなときから面識がある。母がここに入院していた時にお世話になり、私がこの医療ソーシャルワーカーという職を目指したきっかけになった人だ。

「何回それ言うんですか。さすがにそんなに小さくなかったですよ」

「もう人妻だしね。信じられない」
「それは、私もいまだに信じられません」

 そして私が結婚したのは今から半年前。

 彼が忙しすぎて結婚生活ぽいことをしていないので、私にはいまだに実感がない。
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