腹黒脳外科医は、今日も偽りの笑みを浮かべる

 そう言ったとき、

「もも、この前言ったこと覚えてる?」
「この前?」

(この前言ったことってどのことだろう……)

 私が先生を見つめると、先生は低い声で言った。

「言ったでしょ。今すぐにでもめちゃくちゃに抱いてもっと泣かせたいって」

(だめだ。これ、また夢の先生だ……!)

 そう思ったのに、私の目はやけに冴えた。
 目を覚ますためにもう一度寝るべきか……そんなことを考えるより、身体が危機を感じて逃げるように先に動く。

 ベッドから這い出そうとしたところで、先生に腕を掴まれベッドに押し戻されると、先生は、ちゅ、と一度私の唇にキスを落としたと思ったら、そのまま深いキスをした。

「んーーーーっ!」

 その感触がやけに生々しい。夢なんかじゃ説明つかないほどに……。

(なんで……⁉ これ、夢じゃない!)
< 62 / 218 >

この作品をシェア

pagetop