腹黒脳外科医は、今日も偽りの笑みを浮かべる
4章:夜の始まり

―――わかるでしょ? 大人なんだから。それも分かっててベッドにもぐりこんだんじゃないの?


 分かってたけど……。
 でも、絶食系の先生には、そこまでしても襲われそうになることなんてないだろうって気持ちもあって、完全に油断していた。

 私は、先生の激しいキスの感触を何度も思い出して、文字通り眠れない夜を過ごした。
 夜中ずっと起きていたのは、母が亡くなった夜以来だ。

「土曜で良かった……。土曜ってことは、週末か」

 窓から朝の光が差し込みはじめた寝室で呟く。
 『週末は二人で過ごしたい』……結局、この一言が言えないまま週末を迎えたのは確かだった。

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