腹黒脳外科医は、今日も偽りの笑みを浮かべる

「いや、あの……」

 こういう時、どう返していいのか分からなくて、私は口ごもる。

「ごめん、限界……」
「へ?」

 私が顔をあげると、先生はもう一度、ごめん、と言ってリビングのソファに1人倒れ込む。
 そして、すぐに寝息を立て始めた。

「……ね、寝てる?」

 先生は紛れもなく寝ていた。
 私はソファの横に座り込み、ぐっすり眠っている先生を見つめる。

「寝顔、初めて見た。かわいい」

 思わずクスリと笑っていた。
 仮眠室で眠るより、うちに帰ってきて眠ってくれた事実が嬉しかった。

「お疲れさまです」

 結婚してから半年、先生が寝るところは全然見てなかった。だからこそ新鮮でもあった。

 先生の髪を撫でても、先生は起きない。

 私はいつも自分がされるみたいに、先生の額にそっと口づけた。
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