腹黒脳外科医は、今日も偽りの笑みを浮かべる

 小児科の近くを通りかかった時、男の子が画用紙をもって目の前を通り過ぎた。

「りくせんせー!」

 その声に、顔が自然と左右に動く。

 男の子は、すぐさま白衣の男性に飛びついた。
 やはり、その相手は、西條李久先生だった。

 先生は目を細めて、飛びついてきた男の子を抱き留める。

「まさとくん、どうしたの?」

 男の子は5歳くらいだろうか。少し恥ずかしそうにはにかむと、画用紙を先生に見せた。
 中には、元気いっぱいカラフルな色で、笑っている男の人が描かれている。

「これ、せんせい」
「描いてくれたの?」

 うん、と小さく言ってから先生の様子を伺うまさとくん。
 先生はまじまじとその絵を見つめ、にこりと微笑むと、

「こんなにカッコよく描いてくれてありがとう。大事に飾らせてね」

と言った。
 それを聞いた瞬間、まさとくんが満面の笑みを浮かべる。

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