腹黒脳外科医は、今日も偽りの笑みを浮かべる
5章:12時の音
さっきは一人で寝ていた先生の寝室。
今度は二人でここにきて、そっとベッドの上に降ろされる。額に口づけられ、そのまま唇にも口づけられた。
「もも」
先生の優しい声が耳に反響する。
知識もばっちりで自分から言っておいてなんだけど、こんなにスムーズに事が運んでしまえば、自分の心がまだこの場所まで追いついてきていない感覚が襲ってきた。
「先生、あの……」
私が言いかけた言葉をふさぐように先生はもう一度私にキスをすると、髪を優しく撫で、目を細める。
「大丈夫、ももが怖がることはしないから」
やっぱりリク先生は、優しい。
大丈夫。絶対に大丈夫だ。