腹黒脳外科医は、今日も偽りの笑みを浮かべる
―――これを知ってしまったら、なんだかこれまでの自分には戻れない気がする……。
それから2時間後、私は眠ったふりをして先生の顔をちらりと伺った。
先生は、ふっと優しく微笑んで、私の髪を撫でる。
「痛かったよね……身体は大丈夫?」
「……大丈夫です」
先ほどまでのことを思い出して赤面する。
見たことないくらい余裕のない表情で、うっすら汗ばむリアルな先生は、想像以上の格好よさだった。今でもこの先生の逞しい裸の胸板が目の前にあるのが信じられない。
でも、優しく抱こうとしてくれる指先を、私の身体を気遣ってくれる先生を思い出すと、また前以上に先生を好きになった。
これ以上、好きになることなんてないと思っていたのに……。
最中も、何度も好きだと口走っていた気がする。
(それでも言い足りない)
「先生。好きです、大好き」
「僕もだよ」
額に口づけられて、私は先生を見つめる。
(本当はキス、唇にしてほしいなぁ……)
でも、これ以上望んだらこの幸せが全部なくなってしまいそうで、私は何も言わず先生に抱き着いた。
先生も優しく私を抱きしめ返す。
その時、やっと一つになれた私たちを祝福するかのように、12時を知らせる時計の音が耳に聞こえてきた。