腹黒脳外科医は、今日も偽りの笑みを浮かべる

 幸せと、緊張と疲労からウトウトしかけたその時、先生が突然、私たちがくるまっていたシーツを引きはがす。

「……せ、先生……?」

 思わずぎゅっと自分の裸の身体を腕で包んで、先生を見た。
 先生はにこりと微笑むと、首筋に張り付いた私の髪を退かせる。

「キスマーク上から消したんだ。『あっち』が先だとはね。予想してなかった」
「え? あ、あっちって……?」

 聞き返すと、先生は目を細めて私を見る。
 それから突然、両手を無理やり取られると、頭の上で一つに束ねられた。完全に捉えられたうさぎの状態だ。

 突然のことに私が目を白黒させていると、先生はふっと微笑んだ。
 その狂暴な微笑みに、背中が粟立つ。

 そのまま首筋に唇を埋められたと思ったら、首筋を噛まれる。

「いたっ……!」
「うん、痛くしちゃった。ごめんね?」

 先生がまた微笑んだ。

 手を動かしたくて、もぞ、と身体を動かしたけど、両手は先生に固定されたまま動かない。
 不安で先生をもう一度見上げても、目を細めるばかりで手を放そうとはしてくれなかった。
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