腹黒脳外科医は、今日も偽りの笑みを浮かべる

 私が先生を見上げると、先生はまた口を開いた。

「もも、実はね……。僕は一回じゃ、全然満たされてないんだ」

 その言葉の意味はすぐには理解できなかった。

「み、ミタサレテナイ?」
「そう。意味わかるよね?」
「意味……」

(それはもしかして、私の魅力不足とかそういう事だろうか……)

 そんなことを考えて、うりゅう、と涙がにじんだところで、先生は嬉しそうに微笑んで私の涙を舐めとる。
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