腹黒脳外科医は、今日も偽りの笑みを浮かべる

 だから私の身体を気遣って、先生は今までしなかったの……?
 いや、そもそも、一回でやめてくれればいい話だったんじゃないの?

 最初の一回で終えていれば、たぶんとっても素敵な朝だったはずなのに……。

 私が悶々と考えていると、先生はいつもみたいに優しく頭を撫でる。

「……喉、枯れてる。水、持ってくるね」

 水、という言葉に、ひゃっ、とシーツの中に頭を入れて頭ごと覆い隠す。
 しかし、昨夜みたいに口移しで水を飲まされることはなく、先生は寝室を出て、ペットボトルの水を持ってきてくれ、さらにそれをコップに注いで私に渡してくれた。普通の水が煌めいて見えた。そして昨夜と違って優しい先生の笑みも……煌めいて見える。

「もも? 飲まないの?」
「いつもの先生だ……」

 私は泣きそうになりながら、その水を受け取ると、一気に飲み干す。
 先生は、ゆっくり飲んでね、と微笑みながら、もう一度水をコップに注いでくれた。
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