腹黒脳外科医は、今日も偽りの笑みを浮かべる
私は姿勢を正すと、仕事の面談の時のようにまっすぐ先生を見た。
「先生は高校生の時、その症状に気づいて病院にかかっていたんですか?」
「一時だけ。でも、すぐに症状は出なくなったから……。今は年に一度、診てもらってる。仕事もこんな仕事だし、念のためね」
「多重人格……解離性障害ってやつですよね……。私も、実際に会ったのははじめてです」
解離性障害は本人も自覚していない人格が交代で出現する。
今回の場合は、『普段の人格の先生』と『夜に現れる人格の先生』ってことだろう。
(だから、夜に会ったときあんなに驚く発言が多かったんだ……。それに昨日の夜だって、12時の時計の音が聞こえた後、突然人が変わったみたいだったし……)