腹黒脳外科医は、今日も偽りの笑みを浮かべる
「僕は昔から、自分の本音を押し殺して……それが当たり前として成長したんだ。みんなある程度はそうだと思うけど、僕は特にその傾向が強いみたい」
「はい……。確かにそうですよね」
少なくとも、私が見ていた先生はいつも完璧で、疲れていても愚痴一つ言わず、性格だって優しくて穏やかで『聖人君子』みたいな人だった。
それは、立場や、周りからの期待もあったからだろう。
先生が自覚していない間に、本音を押し殺してしまっていることは、私も考えたことだ。だから私にくらい本音を話してほしいと思った。
でも、それと、解離性障害とは少し違うかもしれないことはどう関係しているのだろうか。そう思って先生を見ると、先生は口を開く。
「夜に出てくる僕は、僕の本音だけを持っている僕みたいなんだ」
「……へ?」
(今、ナンテイッタ……?)